東京高等裁判所 昭和40年(ラ)158号 決定
一、原決定の判示するところによれば、原審が第一審決定の確定した訴訟費用の額のうち、第一審決定添付の訴訟費用計算書記載の、番号1の金額中一五〇円、同6の金額中四〇円、同7の一三〇円、同15、39の各金額中各一五円、同46の二〇円、および同47の二六〇円、以上合計金六三〇円は訴訟費用の額から控除すべきものとなした反面、再抗告人主張のように、相手方提出に係る訴訟費用計算書に掲記されていない相手方代表者が本訴の第一審における第四回口頭弁論期日、控訴審における第五回口頭弁論期日に出頭して代表者本人として尋問をうけた日当各金三〇〇円および控訴審における相手方の証拠申出書の貼用印紙額五〇円(控訴審記録五七丁、九〇丁)をいずれも訴訟費用に加算すべきものとなし、その結果第一審決定の確定した訴訟費用の総額金九、八九五円は結局正当である旨判示していることが明らかである。
訴訟費用に関する手続は、本来非訟事件である性質を有するものであるから、民事訴訟においての狭義の弁論主義の原則は当然適用されるものではない。本件記録によれば、相手方の申立総額は金一〇、〇四五円であつて、第一審は右申立額のうち金九、八九五円をもつて訴訟費用額と確定したことが明らかであるから、相手方からの抗告の申立のない本件では、抗告審たる原審は、第一審の確定した前記金額の限度を超えない範囲内においては、第一審決定の認めた項目金額のうち不当のものがあれば、これを削除もしくは減額する一方、申立のない項目金額であつても、記録上明らかなものについては職権をもつてこれを加算することができるものと解するのが相当である。本件当事者間の仮差押異議事件(第一審大森簡易裁判所昭和三七年(ト)第一五二号、同年(サ)第六一一号、第二審東京地方裁判所昭和三八年(レ)第一八〇号)の記録によれば、原決定判示の前記各日当額および貼用印紙額は、いずれも訴訟費用に含まれるものであることが明白であるから、これらの各金額を訴訟費用に加算すべきものとし、これを加算するにおいては第一審決定の確定した訴訟費用の総額金九、八九五円は結局相当に帰するとなした原審の判断は、正当として是認できる。原決定には、再抗告人主張のように、当事者の申し立てない事項を判断の基礎にした違法はない。
二、また弁護士が、同一期日にたまたま数個の別個の事件の訴訟代理人として出頭した場合でも、日当は各事件毎に支給すべきものと解すべきであるから、仮りに、相手方の訴訟代理人であつた弁護士近藤善孝が、再抗告人主張のように、前記仮差押異議事件の口頭弁論期日に、右事件のためばかりでなく、他の事件の訴訟代理人としても出頭した事実があつたにしても、日当一日分金三〇〇円全額を本件訴訟費用のうちに加えるべきものとなした原審の判断は、正当として是認できる。
(村松 江尻 兼築)